監修・執筆 新井 誠|人材採用コンサルタント
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10月は毎年20代の離職者が続出し、その穴埋めで優良求人が出る時期。
今すぐ転職活動を開始すれば早々に内定を得られる可能性は高いでしょう。
来月になれば採用枠が埋まってしまいます。
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書類選考に通り面接の日程が確定!
面接の準備として面接官の心理を調べているんですか?
面接官の本音を知りたいのであれば、面接の際のことだけを調べず面接の前後、つまりは採用することが会社で決まってから転職者が初出社するまでの一連の流れと採用担当者の心理を知っておきましょう。
ビジネスの基本は相手の立場に立つこと。
ちょっと企業の採用担当者の気持ちになってみましょう!
募集をかけることが確定
課長である私が率いるチームはベテラン揃い。
中堅の商社で私のチームは国内外の化学品を扱う。
みんなの頑張りもあり営業成績は社内でもトップクラス。
しかし今の人員で全ての顧客をフォローするのが一杯一杯になるのは目に見えている。また皆ベテランで頼もしいのはいいが一番若い営業主任の山本でも33歳。
チームの継続のためには若手社員が必要だ。
しかし名刺交換から教育しているほどの余裕はない。
入社したら業界、商品に関する教育を施し、遅くとも1ヶ月後には担当引き継ぎに移りたい。
今すぐに成果を出さなくてもいいので真面目で顧客の信頼を勝ち取り、新しいことにも次々挑戦する人材がいい。
チームがキャパオーバーになる前に、次の時代を担う若い営業社員を採用したい旨の稟議が通り3ヶ月以内を目標に20代の営業社員を一人採用することが決まった。
転職エージェントに求人を出す
私はチームを率いながら担当も持つプレイングマネージャー。
チームのマネジメントと顧客のフォローをこなす中でさらに採用活動の仕事も加わった。忙しいのが更に忙しくなったが、3ヶ月後に人が入れば1年後には多くの担当を新人に渡し余裕ができるだろう。
今が踏ん張りどき。
さて総務部に連絡しホームページの採用情報に募集要項を乗せてもらった。
今回は若手の採用なので29歳以下を条件としたかったが総務部からそれはできないと連絡があった。
どうやら雇用対策法なる法律によれば年齢や性別を明記することは禁止されているらしい。
チームの若返りを求めているのに私と同世代や下手したら私以上の年齢の人からも応募が来るかもしれないのか。
30歳以上は今回の趣旨には反するので書類選考で落とすことになるだろう。
あと総務部からもう一つ話があった。
会社のホームページから応募が来るのは1年に1件程度で期待はしないでくれとのこと。まあもともとあまりあてにはしていなかったが。
会社は大手の転職エージェントと長年の付き合いがある。
部長からも転職エージェントを使うよう指示があり担当者の連絡先を教えてもらった。
教えてもらった連絡先を確認すると知っている人だった。
まあそんな気はしていたが。
私もその転職エージェント経由でこの会社に転職してきたのだ。今の会社を紹介してくれた加藤さんが今もうちの会社の担当だったのだ。
早速加藤に連絡を取り、翌日うちの会社で打ち合わせをすることに。
加藤さんとは10年ぶりの再会だが覚えてくれていた。
私のようにマッチングした求職者がその企業で出世して部下を持つ時に再会するのが一番嬉しいとのこと。
マッチングしたはいいもののまた転職することになり再会するパターンもあるそうだが、それは自分のマッチングが良くなかったことにも一因があるような気がして複雑な気持ちになるそうだ。
昔話もほどほどに、こちらの募集条件を伝える。
打ち合わせでは年齢を伝えても構わない。
転職エージェント側で年齢を見てこちらが希望する29歳以下に絞って紹介してくれるのであれば手間が省けてありがたい。
あと化学製品を扱っているので化学の知識があるに越したことはない。輸出入で英語のメールでのやりとりもある。
打ち合わせが終わり、3日以内に条件に該当する求職者の情報をくれるとのことだった。しかし転職エージェントはサービスはいいが値段がちょっと高い。
打ち合わせが終わり、念のため他の転職エージェントや転職サイトも味見だけしておこう。
ハローワークは求人掲載費が無料なのは魅力だが就職困難者が使うイメージであまり求めている人材からの募集は来なさそうだ。
時間も無いことだし使うのはやめておこう。
転職サイトも使ってはみたいが今回は3ヶ月以内に採用するのが目標。
狙い撃ちしなければ目標の達成は難しいだろう。
何よりも採用活動を長引かせて本業への支障をきたしたく無い。今回は転職エージェント一本に絞ることにした。
もし加藤さんからあまりいい紹介が無ければ他の転職エージェントを利用することも検討しよう。
書類選考
打ち合わせの翌日早速転職エージェントに来ている第二新卒者の中から条件に合う人の履歴書が3枚、さらに翌日に5枚送られて来た。
要望通り29歳以下だ。
1姫に送られてきた3枚の一人目は同じ業界で知っている会社の人間。
同じ業界であれば教育は最小限で済む。
魅力的だ。
他にも不動産業界で営業畑でやってきた人が。
なんで不動産から化学品商社なんだろう。
よく見たら中堅大学だが理学部化学科卒。
化学の知識と営業経験がある。
この人もいいな。
保険の営業からも一人。
保険の世界って大変て聞くから営業力には期待できるのかな。
でも化学に関する知識が無さそうだ。
TOEICが600点だから加藤さんが紹介してきたのかな。
600点は微妙だな。
2日目に送られてきた5枚もいい人材が多かった。
一流私立大学卒業後海外留学をしており26歳だが社会経験は無し。
あ、この人知ってるぞ。
また同じ業界から。
狭い業界だな。
この人の上司と飲んだときにこの人の口が思わずこぼれていたな。
取引先の部下はちょっと他の人よりも採用しづらいかも。
おお、こちらは一流国立大学卒業。
学歴なんて関係ないとは思うものの履歴書でみると迫力を感じる。
TOEIC800点。
TOEICで高得点を取っていても英語を話せない人がいるが、800点あればメールのやりとりは可能だろう。
というか私よりも英語に関しては優秀だ。
他の3人も一つは魅力がある。
結局1日目の同じ業界の人、元不動産屋、2日目の一流国立大学卒の人と面接することを決めた。
一次面接
面接する3人を決めて転職エージェントの担当者加藤さんにメール。
すると直後に加藤さんから電話。
「ちょっとだけ御社の条件から外れているんですがいい人なんです!書類送るんで見るだけでも見てください!」
確かに年齢こそ31歳だがちょっと優秀。
でも対象年齢30歳未満は譲れないのでお断りすることに。
うちのチームの最若手33歳の山本と大して年齢が違わない。新しい世代という感じがしない。
最終結論は変わらず3人面接することに。
その旨を加藤さんに伝えると落とした3人はどこが悪かったのかを結構根掘り葉掘り聞かれた。
正直2日目に落とした最後の3人なんかは最初の方に紹介された人と比べたら細かく見ていない。
紹介される順番も多少は関係があると思う。
まあ私がズボラなだけだが。
まずは同じ業界のAさん、次に一流国立大学卒のBさん、最後に元不動産のCさんの順番で面接することとなった。
Aさんいかにもこの業界の若手という感じ。
しかし会社を辞めた理由が給与と労働時間。
同じ理由で辞められかねないし給与は多少良くなっても同じ業界なので労働時間は大して変わらない。
うちのチームは皆頑張って仕事しているので労働時間云々を問題にする人はおらず合わないと思った。
一流大学卒のBさんは確かに優秀だった。
しかしBさんの最終目的は起業にあるようで、長く勤めて将来的には今の世代が全て引退した時にリーダーになって欲しいと思っているので残念ながらこちらの希望と合わない。
長く務める気であれば最有力候補だった。
惜しいが仕方がない。
Cさんは営業経験は文句なし。
どうやら不動産会社はブラック企業だったようだ。
話を聞いている限りブラックでなければ1社に長く勤めたい考えのようでここは私の希望する条件と一致する。
また理学部化学科卒で科学の知識があるのはやはり良い。
なかなか理系卒で営業経験がある人は少ない。
個々の能力で飛び抜けているものはないが年も若いし、営業力と科学の知識の組み合わせに魅力がある。
今まで面接した誰よりも正直に話している印象もあり、当社の製品名や用途をよく調べており入社の意欲が一番見えた。
結果、Cさんに最終面接に進んでもらうこととなった。
その旨をキャリアアドバイザーの加藤さんメールで伝える。
またか加藤さんから電話があり、なぜ他の人は最終面接に進めなかったのかを聞かれる。
後日また新たな人の書類が送られて来る。
キャリアアドバイザーに細かく聞かれた内容が反映されている人選であったと思うが、今はCさんをほぼ採る気でいる。
SPI(Synthetic Personality Inventory)検査を受けてもらう
SPIとは性格と能力を測定する総合検査。
正直これは本来の目的を測定する上ではあまり意味がないと思っている。
実際に私自身がSPIを受けたことがるが、どのような質問にはどのような回答をすれな企業が好む人材に移るか全て本に書いてあるのだ。
あれだけ企業研究してきたCさんのことだ。
SPI対策もバッチリだろう。
まあSPIに受かるために本を読むのはルール違反ではない。
予想通り能力は優秀で人格は素晴らしい人材だとの結果が出た。
面接で見る限りそこまで優秀ではなく、人格の印象も素晴らしいというか普通の兄ちゃんだ。
まあ1回の面接でどこまで理解できるかなんて実際のところ分からないが。
最終面接
最終面接は社長による面接。
まあ課長の私がOKを出した時点で内定はほぼ決まりみたいなものなのだ。
あとは社長による最終確認と形式的なものだ。
Cさんが人がすんなり退職して出社日を待つのみ。
どうやら期限の3ヶ月以内に初出社までたどり着きそうだ。
新人くん初出社
採用したものの初出社の日に来ない・・・。
なんて聞いたことがあり、頭をよぎるがそんなこと考えてもしょうがない。
いつも通り出社するとCさんは既に会社に来ていた。
出社時間の30分前には会社に着いていたそうだ。
まあ転職初日はそんくらい緊張感を持ってほしいものだ。
一安心、できるはずもない。
人を採用したのがスタートライン。
これからCさんにはチームに一員として頑張ってもらわなければならない。
まずは同僚への紹介、会社についての説明、チームの説明、商品の説明。
ある程度教育できたら売上の小さなお客さんから引き継いでいって徐々に大きなお客さんも任せていく。
先輩社員の手が空き始めたら、彼らには新規開発に注力してもらおう。
チームが会社が大きくなれるかは今Cくんにかかっている。
最後に
企業側から見た転職エージェントを使っての転職活動を少しはイメージできたでしょうか。
転職活動というと始める前はなんだか人間臭さがない無機質な優秀な人から転職していくようなイメージだったんですが、実際には人間臭いんですよね。
まあ、転職するのも人を採るのも人間ですから当たり前なんですが。
転職の裏側が見えたら今自分が何をすべきかが見えて来ませんか?