監修・執筆 新井 誠|人材採用コンサルタント
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社会経験の無い新入社員には入社した会社がブラック企業かどうかなんて見分けがつきません。
目の前に広がる世界が全てになってしまうのです。
でも比較対象があると自分の会社がブラック企業かどうか判断材料が手に入ります。
この記事を読んで(俺の会社でもこんなことよくある)とか(私この気持ちむちゃくちゃ分かる)と思ってしまえばもしかしたらあなたはブラック企業に勤めているのかもしれません。
ブラック企業に入社した直後から仕事に慣れるまでの経験を生々しくお伝えします。
ブラック企業へ入社
まさか自分がブラック企業に入社するとは夢にも思っていない私は意気揚々と入社式に向かいます。
前もって入社後のスケジュールは伝えられており2週間関西の本社で研修の後、配属先が発表されるとのことでした。
オリエンテーションで新入社員30名が27人に
入社式では社長の挨拶に始まり名刺の渡し方から電話の受け方、会議室での席順、言葉遣いなどの研修、関西地方の営業マンに付いて回るOJTなどであっという間に2週間は過ぎました。
OJTとはOn the Job Trainingの略称で実際の業務を通じて仕事を学ぶ手法です。
上司や先輩について回ったり指導してもらうことにより仕事を覚えていきます。
しかし今思えば車の座席の席順、エレベーターの立ち位置、など新卒の新入社員に教えるべきことで教えていないことはたくさんありました。
しかしそれは新入社員には分かりません。
転職後に私は大恥をかくことになります。
2週間が経った頃、30人いた新入社員は27人になっていました。
当時はよく最近の新入社員は3年以内に30%もの人が転職してしまうと言われていましたが、私の入った会社では入社後2週間の間にに10%が辞めていたのです。
この時点で会社をやめた彼らがオリエンテーションでこの会社がブラック企業だと判断したかどうかは分かりませんが、少なくとも自分が長く勤める会社ではないと判断したのでしょうし、少なくとも当時の私より将来のイメージを明確に持っていたのではないかと思います。
このときの私は(自分には関係ない事だ)と気にもとめていませんでしたし、自分のふさわしくない会社だと判断する能力もありませんでした。
将来の明確なビジョンが無くとも新入社員が10%も辞めたらちょっとは疑問を抱くべきだったと思います。
オリエンテーション最後の日に私は地方都市への配属の辞令が下りました。
オリエンテーション最後の日には面接官だった専務も加わり、全国に散らばっていく27名を本社の方々に飲み会で送って貰いました。
その時に印象的だったのが採用担当者のDさんに専務に挨拶してお酒を注ぐように言われた後の光景です。
専務の前に20名を超える行列ができたのです。
そしてこれはこの会社の社風だったのです。
のちに私が配属される地方都市と東京でも専務を交えての飲み会が複数回ありましたがいずれも専務の前には瓶ビールとグラスをもった社員が30分待ちの行列を作っていました。
会社の上層部に顔と名前を覚えてもらうのは会社員としてはあっても良い行為だとは思いますが、あまりに形式張って毎回やっているのは異様な光景でした。
のちに転職する会社でも社長にお酒を注ぎに行く光景はありましたが、行列なんかできることはありませんでした。
北関東に配属されブラック企業であることを認識
私は新入社員の中でも関西から最も遠い地方都市に配属され、土地や建物を所有する人に対して遊休地を活用するビジネスを提案する部署に配属されることとなりました。
この時点では私は仕事やる気満々。
早く独り立ちして契約を取りまくりたい!という気持ちでいっぱいでした。
しかしOJTで見た先輩の姿は想像とはちょっと違うものでした。
顧客から上司宛に呪いのメール
入社して間も無く同行営業を続けていましたがそこで少しずつ分かってきたのは販売する社員のモラルの低さ、また社員のモラルが低下せざるを得ない会社の仕組みでした。
一人目の上司は物腰の柔らかい感じのいい人というのが第一印象。
入社間もなくその上司と初めての顧客訪問に行くこととなります。
私の配属された部署の仕事は遊休地を持っている人などに対して、その土地を活用したビジネスを提案し工事や設備の注文を取ってくるという営業職でした。
始めて訪問したお客さん(以後Aさん)は上司の営業活動の結果、つい最近事業を始めたばかりだったため、アフターフォローの営業です。
その事業は始めたばかりということもあってかまだお客さんが付いておらず、売り上げはほとんど発生しておらずAさんの表情は不安いっぱいという感じでした。
上司は「3ヶ月目以降からお客さんがつき始めますよ」という言葉を残しお客さんの元を去りました。
それから2ヶ月ほど経ったある日、そのお客さんから上司宛で私にもccが入ったメールが。
内容は「御社の進めの通り事業を始めましたが、未だ売り上げはほとんどありません。フォローも手厚いとおっしゃっていましたが2ヶ月前に顔を出したきり何のフォローもありません。このままでは破産してしまいます。どうしてくれるのですか?」というような内容のものでした。
実際にはもっと辛辣でどこにも持って行きようのない憤りが感じられる文面でした。
このメールが来た時が会社に違和感を覚えた最初の瞬間です。
それまでは(ちょっとおかしいかな?)と思っても(まあ実際の社会なんてこんなものかもしれない)と言い聞かせていた部分があったのですが、このメールは明らかにおかしいと感じました。
その後もその上司は事業の販売を続けますが、ことごとく事業で売上の上がる顧客は現れず、訪問するのが気まずくなり疎遠になるという悪循環を続けていたのです。
私は2年ほど地方都市の支店に勤めたのですが、少しはその事業のことが多少は分かるようになった頃、各お客さんの店舗を地図上で確認したり周りを車で走ってみたり人口分布を確認してみると、その事業に向いていない場所であることは明らかでした。
そしてその場所が売上の上がりにくい場所であることはその上司も経験則で認識していたはずです。
ではなぜ販売してしまったのか。
それは会社から言われている売上ノルマを達成するためです。
上司は所長から日々売上利益の達成を求められます。
またインセティブ制のため事業を販売した利益が最優先となり、一銭にもならないアフターフォローはおざなりになります。
Aさんからしたら何百何千万円を投資する人生を賭けた一大事業ですが、上司からすると販売した後にフォローすることは意味が無いのです。
もちろんその事業を始めるのも行うのもAさんであり、営業マンの提案する事業提案書を鵜呑みにしたAさんにも責任はあります。
しかし売上を上げることだけが目的の上司が作る事業提案書はお客さんがその事業をその場所で行なったら採算が取れるかではなく、どうやったらそのお客さんが契約する気になるかということが目的になっていました。
どう見ても人が集まりそうにない場所でも数字をいじって、初年度は赤字だけど2〜3年目から儲かりますよ、という感じの内容になっています。
多くのお客さんは、そんなものか、やってみないと分からないか、プロが2〜3年目から大丈夫って言っているから大丈夫だろ、という気持ちになり契約してしまいます。
上司に騙す気は無く、(自分の経験則からするとお客さんは最終的に儲かる。そもそも事業はやってみないとわからない)と思い込むことにより収益化の見えない場所でも無理やり売っているように見えました。
そんな事業提案書に基づいた事業がうまくいくはずもなく、自分の提案に基づいて黒字化する見込みのない事業を始めたAさんには訪問しづらくなっていったのでした。
事業に向いていない場所での販売を続ける上司にその事業に向いている立地のノウハウは貯まりません。
上司の販売する顧客のほとんどは事業に失敗していました。
しかしそんな上司にも新規顧客を開拓する力はありました。
というか会社全体として新規顧客獲得のノウハウだけは持っていたのです。
飛び込み営業やダイレクトメール、展示会などで新しい顧客をどんどん捕まえ、売るだけ売ってアフターフォローはしないのです。
部署は違えどこれは社風とも言えるものであったと思います。
ホームページではお客さんとの信頼関係がなんたらとか書いてあるのですが全くの嘘でした。
飛び込み営業は大変だと思う人が多いかと思いますが、実は縁もゆかりもない人に対して声をかけてダメだったら次というのは案外気楽なものなのです。
転職後には今まで先輩が気づいてきた信頼関係を継続する方がはるかに責任が重く大変であることを知ることになります。
会社全体の仕事を知るため特定の上司だけではなく他の先輩社員に同行する機会も多くありました。
ホワイト企業に転職してからはどの先輩もすごく仕事ができてカッコよく見えたのを覚えています。
しかしブラック会社の若い先輩は全員ある程度打ち解けると「うちはあまりいい会社じゃないよ」とか「大変な会社に入っちゃったね」など非常にテンションの下がることを言われました。
そして徐々に新卒の切符をブラック企業に使ってしまったことに気づいてゆくのです。
会議は「時間外」にやるもの
この会社には「時間外」という概念があり営業活動に直接関係無い仕事は全て日が沈んでからか土日にしかやってはいけないという風習がありました。
ある日新入社員である私に所長から営業マン全員が空いている日時を確認し会議の日程を決めるように言われました。
ちょうど水曜日の午前中には誰も予定が入っていなかったので9時から会議を入れると所長から
と言われました。
とまあ、18時に会議が始まること自体は他の会社でも珍しく無いと思うのですが、問題は会議の内容です。
というか会議の内容など無いのですが、所長が誰かを吊るし上げてひたすら1時間怒鳴りまくって気が済んだら「あとはお前らでやっておけ」と言い残して所長が帰ります。
残った営業マンで営業会議をするも暗い雰囲気。
これで良い成績が出るわけもありません。
他にも研修、資料作りなどはすべて「時間外」にやるべきことでした。
日曜日にお客様から機械が故障したと電話が鳴りサービス部門に連絡を取ったところ、人がいないため機械のことなど何もわからない私が工具を持って修理に行ったこともありました。
もちろん休日出勤手当など無しです。
不思議なものでこのような会社に新卒で入社するとこれが当たり前と感じる感情が育ってきます。
怒鳴り散らす所長
所長は会社内でよく怒鳴っていました。
もし平日の昼間に会社にいようものなら「こんな時間に会社にいるくらいなら外に出て一件でも客回りをしてこい!デスクワークは時間外にやれ!」と怒鳴られます。
月末に売上目標が達成できぬまま会社に戻ると支店長から「こんな数字も達成できないのか!お前は営業マンじゃない!まだ18:00だから今からお客さん周りして何でもいいから売ってこい!」と言われたこともあります。
実際はこれよりはるかに汚い言葉でしたが、会社では毎日このような言葉が飛び交っていました。
極め付けは毎朝ヤクルトを売りに来るヤクルトのおばちゃんにまで怒鳴っていたことです。
次の日の朝に何事もなかったかのようにヤクルトを売りにきたおばちゃんも凄かったです。
ちなみに社内でお客さんの名前を出す場合は呼び捨てにする人が多く、転職後にあの状態はお客さんの立場よりも自社の利益を優先していることを象徴していたな、と思いました。
気がつけば半数になっていた同期社員
毎朝会社には本社からFAXが流れてくるのですが、その中には新入社員の初契約速報も含まれていました。
2007年前後でFAXという時点でだいぶ時代遅れですが・・・。
次々と同期が初契約を達成する中私はなかなか初契約を取れずにいました。
上司や所長からは「お前の同期は初契約を取っている。お前も早く取ってこい!」というプレッシャーを日々与えてきました。
私は地方都市に配属後半年ほどして初契約を取りましたが、その後また契約が取れない時期が続きます。
同意社員の初契約速報FAXと時を同じくして、同期同期社員のメールで出回っている情報がありました。
それは会社を辞めた新入社員についてでした。
入社1年が経った頃には約半数が会社を去っていたのです。
その入社1年が経とうとした頃に私は大きな契約を次々と決めることが出来ていました。
給料はインセンティブだったので、入社1年目にしてはそこそこのお給料をいただいた月が3ヶ月ほどありました。
私の部署は先述の通り遊休資産を持つ人などに対して、その土地を活用したビジネスを提案し工事や設備の注文を取ってくるという営業職。
お客さんに何千万円という投資をしてもらうのです。
市場調査を私が行いここなら大丈夫と思ったため自信を持ってお客さんに勧めた事業で実際に事業は滑り出しからうまくいきました。
しかしこれは本当にたまたまです。
上司にまともな指導を受けたわけでもない去年まで大学生の新人が行なった市場調査なんて素人が調査したも同然です。
上司はお客さん目線ではなかったので、報告はしますが積極的に相談はしませんでした。
本当にたまたまでしたがお客さんの事業が上手くいってよかったと思います。
もし前述のAさんのように事業がうまくいかずお客さんの人生に悪い影響を与えてしまっていたら、私も心に傷を追っていたと思います。
しかし当時の私はあまり物事を深く考えず、営業マンとしての自信につながりました。
その後、同じお客さんが様々な商品を買ってくれたため一躍会社でもトップクラスの成績になっていました。
しかし特定の一顧客が何ヶ月にもわたって買ってくれるわけもなく私の成績は急降下します。
この中途半端な成功体験はブラック企業に在籍する期間を伸ばしてしまったと思います。
比較対象がなければ会社のおかしいところにも気づけない
地方都市に配属されて1ヶ月ほどでブラック企業だとは薄々気づいていましたが、会社を辞めるということは逃げることと考えていたため最初は辞めることは考えていませんでした。
またちょっと良い成績を出してしまったのもその後2年会社にい続けた要因の一つだと思います。
そんなある日大学の友達と飲んでいるときに自分の勤める会社が異常であることに気づきます。
遅くまで働いている友達はそれなりにいましたが、土日まで会議や研修を行なっている会社に勤めている友達はいませんでした。
まあここまでは予想通りでしたが、衝撃だったのはボーナスです。
との問いに別の友人が指を3本立てました。
最初は意味がわからなかったのですが、すぐに理解すると同時に落胆しました。
友人が立てた3本の指や言った1というのはもちろんボーナスが何ヶ月分かということ。
当時私がもらっていたボーナスは3・・・万円でした。
大学の同窓生と話をしているとボーナスの差だけでなく、社会人としての知識・立ち振る舞いなどの差も感じるようになると同時にこのままではどんどん差が開いて行くだろうと感じました。
唐突ですがあなたはレントゲン写真を見て病気かどうか分かりますか?
お医者さんじゃない限り分かりませんよね?
ではなぜお医者さんは健康な体と異常を抱える体の見分けがつくのか。
それは健康な体(正常、一般的)のレントゲン写真をたくさん見ているからです。
健康な体のレントゲン写真を何百、何千と見たことがあるお医者さんだからこそ、小さな影を見落とすことがないのです。
自分の会社が一般的かどうかはついこの間まで学生だった新卒者には判断できません。
定期的に同級生など社外の人間と話をする機会を設けることにより自分の会社を客観視することができます。
友人の会社が全て一般的だったわけではないとは思いますが、多くの友人から働きぶりを聞いていくうちに自分が働いている会社が異常であることは確信に変わりました。
そうなると今の会社は長く勤めるべきでないという気持ちが強くなってきました。
そんな気持ちの中、東京転勤の辞令が降りました。
このタイミングでやめるべきか悩みましたが、(東京は何か違うものが待っているかもしれない)という期待と(同期の話を聞く限りあまり期待ができない)という気持ちがあり、後者の方に気持ちが偏ったまま転勤となりました。
最後に
会社内の人間関係しか無くなってしまうと考え方が会社の考え方に凝り固まってしまいます。
定期的に社外の人間と話をする機会を設けましょう。
私もだいぶブラック企業の考え方に染まっていたので須賀、このときはそのことには気づいていません。
ホワイト企業に転職してから私簿常識が非常識であったことに気づくことになるのですが、ホワイト企業でもやはりその会社独自の社風はあります。
よりたくさんの会社の状況を知り、平均値と自分の位置をなるべく正確に知ることが大切です。